1.すでに新聞等で報道されておりますように、2月6日、白血病のイラク人少年アッバース君(6歳)がイラクで急死しました。
劣化ウラン弾を浴びた兵士を父に持ち、高度放射能汚染地域であるバスラで生まれ育った、典型的なウラン弾禍の子どもでしたので、私どもも何とか救命したいと取り組んできましたが、残念な結果になりました。
2.現地主治医のフサーム医師によると、死亡時の状況は以下のとおりです。
・アッバースは帰国以来ずっと元気にしていた、
・死の前日の2月5日も、日中はいつものように兄弟たちと元気よく遊んでいた、
・その夜高熱を出し、未明にはけいれんも始まったため、病院に搬送された、しかし、来院時にすでに意識はなく、呼吸にもノイズが発生していて手の打ちようがなく、午前10時にそのまま息を引き取った。
・死因は、感染性の髄膜炎を疑うが、あまりに短時間の容態急変で、断定できない。
3.日本全国からのご支援で、小児白血病の分野では世界のトップクラスとされる名古屋大学病院で治療でき、経過良好で帰国した彼をも、結局救命することはできませんでした。
バスラでは、発病後アッバース君のように長く(と言っても、わずか1年9ヶ月間ですが)生きられている子どもはほとんど皆無で、「まだ生きている」と、激増する白血病の子どもたちの希望のシンボルでもあったそうです。そのようなことも併せ考えると、無念で無念で、言葉が出ません。
4.アッバース君は、「イラクジン ダカラ イラクニ カエルヨ バイバイ」と日本語で言って帰国しました。そう、彼はイラクの子だから、ほかのイラクの子たちと同じように死んでいったということでしょう。
彼の後ろには、何千人もの死にゆく「アッバースたち」が列をなしています。私たちは、これからも「アッバースたち」を助けるために支援活動を続けていきます。
どうか、皆様も、折にふれ、彼のあの大きな目を、ツルツルのあの頭を、思い出してあげて下さい。そのことが戦争も劣化ウラン兵器もない平和な世界を作っていくための礎になると、私どもは信じています。
アッバース君をはじめイラクの子どもたちへのこれまでのご支援、まことにありがとうございました。そして、今後とも引き続いてのご支援をよろしくお願いいたします。お知り合いの方々にもメールやFAX等で本文をお知らせいただければ幸いです。